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禅がZENZENわからない人のための部屋

この漢字を見つめても「?」しか浮かばないどころか、だんだん「蝉」に見えてきてしまう…。そんな、「禅」についてなんの知識も持たないライターが、東京都世田谷区にある臨済宗(りんざいしゅう)のお寺、龍雲寺のご住職・細川晋輔(ほそかわしんほ)さんに素朴な疑問をぶつけてきました。「禅」と聞くだけで近寄りがたいものを感じてしまう方、ぜひ一緒に学んでいきましょう。

聞き手・構成:小泉なつみ

  • 一 禅の部屋
  • 二 さらに奥の、禅の部屋
  • 三 お坊さんの部屋
  • 四 禅展の部屋
四 禅展の部屋
禅僧のみなさんにとって、今回の「禅展」はすごいことなんですか
大事件です。僕らにとってのバイブルのような作品だらけですから。臨済宗の十五派本山が協力してこれだけの規模で展覧会をやるっていうのは50年に一度、いや、もう二度とないかもしれない。
細川さんにとって思い出深い作品ってどれですか。
雪舟(せっしゅう)の「慧可断臂図(えかだんぴず)」は僕が禅の道場に入門した22歳のときに現物を見たこともあって、初心を忘れずにいなければ、と身が引き締まりますね。
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国宝 慧可断臂図(えかだんぴず) 雪舟等楊筆 室町時代 明応5年(1496)
愛知・齊年寺蔵 展示:11月8日 - 11月27日
この画は禅宗の祖である達磨(だるま)さんに弟子入りをしたいと申し出たお坊さんの慧可(えか)が、その決意を表わすために自らの左手を切り落として差し出している場面です。
(白目)。
実際、入門のときが一番キツいんですよ。それこそ20代前半の子が、それまでめちゃくちゃ時間を費やしてきた髪型も坊主にして、彼女も作れず、携帯電話もなく、突然夜の12時まで坐禅して朝3時起きという生活をすることになるわけです。でも、3年経つとそこまで苦しくなくなりました。
慣れ、ですか。
煩わしさが一切ないんです。人付き合いの面倒くささもないですし、嫌な仕事があるわけでもない。これがなにもかも捨ててしまった瞬間なんですね。すると苦しみもなくなって、非常に楽なんです。この延長線上には、2500年前のお釈迦様の「悟り」というものがあると思います。はるかに及ばないことは言うまでもありませんが、お釈迦様は一人で生きるうえで苦しみから逃れられたし、心の安らぎも得られた。でも自分だけ救われるようなことはよくない。まわりの人の心も安らかにしていきたいとお釈迦様が決心されて、12月8日に菩提樹(ぼだいじゅ)の下から「よいしょ」って立ち上がったのが仏教のはじまりだと思うんですよ。
記念すべき「よっこらしょ」というわけですね。
今回の「禅展」で見られる作品は美術的な優劣を競っているわけではなくて、みんなを幸せにしたくて誰もが腰を上げ、筆をとられたものっていうのがいいんですよねえ。白隠さんが描かれた「慧可断臂図」は、雪舟バージョンとのビフォアアフターになっていて、慧可が腕を切り落とす前を描いています。
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慧可断臂図 白隠慧鶴筆 江戸時代 18世紀
大分・見星寺蔵 展示:11月8日 - 11月27日
上にある文章は、「肘(ひじ)を切るなんて、せっかく親からもらった体にもったいないことをして」って書かれているんですけど、これも白隠さんの優しさとういうか、「なんで肘断っちゃったんだろうねえ」っていう風に終わっているのがおもしろいんですよね。
雪舟版と比べると、ずいぶん絵柄もポップですよね。
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これもいいなあ。

昔は達磨さんの画などが仏像の代わりとして礼拝の対象になっていましたが、それが段々、禅の教えを広めるためのプロモーションとして変化していっているんですね。あともうひとつ、僕らお坊さんにとって大事な書がありまして…。
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重文 花園天皇宸翰置文 南北朝時代 貞和3年(1347)
京都・妙心寺 展示:10月18日 - 11月6日
花園法皇様による御宸翰(ごしんかん)というもので、亡くなる直前にしたためられたものです。花園法皇様は激動の人生を送られていて、仏教に心の安らぎを求めて悟りを開かれたんですが、そのご恩に報いるために仏教をなんとかして広めたいという思いから筆をとられたんです。これも見るたびに僧侶としての初心を思い出す大切な作品ですね。
知識をもらうと、よりおもしろく見られますね。
でも、重要文化財だから、国宝だからスゴいではなくて、自分の心が感じるままでいいと思うんです。そうやって自分に向き合って見ることがなによりです。
やっぱり自分に集約されるんですね。
そういわれると、煙に巻くのが僕らの仕事みたいですね。でも、多くの方々に作品の奥にある優しさに触れていただきたいです。
禅展の部屋でわかったこと!禅展の部屋でわかったこと!
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